合同ワークショップin桐光学園

<日程>令和 5 年 6 月 17 日(土)14:00~17:00
<会場>学校法人桐光学園 小学校体育館
<参加校>桐光学園、高津高校、新城高校、カリタス学園、生田東高校、洗足高校、日本女子大学附属高校、菅高校、大師高校 計9校
<参加者>52名
<講師>河田園子(演劇企画 JOKO)
<アシスタント>原田亮(Platanus)

【はじめに】
川崎市内の演劇部がある高校9校から演劇部員が集まり合同でワークショップを実施しました。
以前は新演劇部員を対象としたワークショップでしたが、コロナ禍で2~3年生も十分な部活動が行えなかったことから、昨年に引き続き全学年を対象としました。

昨年の合同アウトリーチでは参加者から「このワークショップの内容を日々の部活動でもやってみたい」という声を多数いただいたことから、今回はアウトリーチに参加するだけに留まらず、これからの部活動や個人の練習でも使えるような「お土産」をたくさん持って帰れるワークショップに焦点を当てました。

講師の河田さんからは「今日のワークショップは教える、教わるの立場ではなく、みんなが欲しい情報を自分からゲットしにきて欲しい。あっという間の3時間です。受け身にならないでみんなでワークショップを作り上げよう」と声を掛けスタートです。

【心の壁を取っ払え!】
まずはアイスブレイクから始まります。アイスブレイクとは体を温めるためのウォーミングアップとは違い、緊張して固まっている心と体をほぐすために行います。
簡単なゲームを通してアイスブレイクを行いながら、日々の部活動で自分達だけでもできるように一つ一つの目的、意図を丁寧に説明していきます。

最初のゲームでは、全員が円になり一人が対角にいる人の元までダッシュで向かいハイタッチ、今度はタッチされた人がまた別の人の場所までダッシュしてハイタッチを繰り返し、徐々に走る人数を増やして常に十数人が縦横無尽に走り回ります。
まだ様子を伺いながら緊張していた参加者たちでしたが、一人目がいきなり全力のダッシュを見せたことで一気に全員の心がほぐれて楽しもうという姿勢が見え始めました。
その後も体を動かしながら自己紹介をするゲームなども交えて心の壁を取り払います。

周りとコミュニケーションを図りながら少しずつ緊張から解放していき、自分をさらけ出しても大丈夫な場を全員で作り上げていきます。

【コトバのお土産・声の仕組み!】
コロナ禍では演劇部もマスクをつけての活動が長く続いていました。
そこでマスク生活で弱まった発声・滑舌練習のためのワークショップを行いました。

まずは資料を見ながら大きな声を出すための肺の動き、滑舌よく話すための舌の動きをメカニズムから理解します。
発声の基本ともなる腹式呼吸は文字だけを見るとお腹に息を入れる呼吸と思いがちですが、肺が風船のように膨らむことで実は体の背中側も膨らんでいます。
二人一組になり、呼吸している相手の背中に手を置いて膨らみを確認することで、今まで意識できていなかった呼吸の仕組みを具体的にイメージすることができました。

次にテキストを使い、息の強さや声の高さを変えて読んでみました。同じテキストを読んでも、発声の仕方だけで役を演じ分けられることを実感します。日頃の発声練習が演技、想像の幅を広げるためにいかに大切かを学びました。

【カラダのお土産・動物で役作り⁉】
「役作り」にはいろいろな方法があります。参加者に普段どんな方法で役作りをしているか聞いてみると、役の性格から好きな食べ物まで具体的にリストを作る人、こんなときこの役ならどうするかを即興で動いてみる人、一人一人違うやり方があり全部正解ですが、今回は頭ではなく体を使っての役作りにチャレンジです。

まずは自分のニュートラルな立ち姿を意識します。まっすぐ立っているつもりでもマネキンのようにはならず、頭が傾いたり、肩の高さがずれていたりとそれぞれのクセが現れます。
この自分の頭の中のイメージと実際の姿のずれをなくして自分自身を真っ白なキャンバスにすることが第一段階です。

今回の役作りは「アニマルエクササイズ」。クセの無くなったニュートラルな姿から今度は動物になりきって動いてみます。腕はどうなっているか、胸は張っているか、「物を取る」「目で追う」そんな行動の一つ一つに動物のクセを投影させます。
さらにクセを誇張していき、最後にはどんどんヒューマナイズ(人間化)させます。四本足は二本足になり、羽は腕になり、最終的には自分ではないクセを持った人間の姿が出来上がるのです。
普段から他人を観察してみると「この人はこの動物っぽい」と感じることがあります。その人に似た役を演じる時は、同じ動物をヒューマナイズしてみると役作りのヒントになるかもしれません。

【質疑応答】
ワークショップの最後には質疑応答の時間を設けました。プロに直接相談できる機会に参加者たちは今日の内容に限らず日々の部活動での悩みも含めて積極的に質問を投げかけます。

Q.発声の大切さを学んだが、静かなシーンでもお客さんに聞こえるように大きく発声すべきなのだろうか。
A.大きな声にしなくても、相手がセリフをどう聞いているかでも表現できる。セリフだけに頼らず目線や動きでもキャッチボールしてみよう。

Q.これまで大所帯の作品を書いてきたが、初めて二人芝居をつくる。二人でも迫力を持たせるにはどうすればよいか。
A.常に舞台上で、二人の間で何かドラマが起きていればお客さんも興味を持ち続ける。このドラマが大きければ迫力に繋がる。

Q.一人芝居の脚本を書いたが、役者側からセリフと動きが合わないと言われた。自然な動きをどう表せばよいか。
A.体で説明できることも全部セリフにしているかもしれない。セリフ先行で考えるのではなく、動きだけでは伝えきれないときの助けにセリフを使ってみよう。

【最後に】
演劇部という同じ共通点を持った仲間達でも、52名の参加者たちはそれぞれ違う演じ方、考え方があり、学校ごとにも異なる練習方法や抱えている課題があります。
今日のワークショップの内容も決して唯一の正解ではありません。しかし初めての演じ方を知り、初めて会う人たちと触れ合うことで、今まで知らなかった演劇の世界や新しい自分と出会えた人もいました。
このワークショップで見つけたたくさんの初めての経験が、これからの部活動や演劇活動に繋がる「お土産」になったでしょう。

【参加者アンケート抜粋】
・普段の発声では手が届かなかったところに届いたような気がします。
・色んな人とも仲良くなれたことや、今後に活かせそうな知識が身につきました。この知識を今日来れなかった部員にも共有していきます!
・グループワークをする中で、人によって表現の仕方が違うことをたくさん見つけられて楽しかったです。
・このワークショップを通して、新しい自分の芝居をつかめたような気がしました。
・全身を使って思い切って動けたのでとても楽しかったです!発声、動きのどちらともとても良いヒントを頂けました。

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