合同ワークショップin桐光学園

<日程>令和 6 年 6 月 15 日(土)13:30~16:30
<会場>学校法人桐光学園 小学校体育館
<参加校>桐光学園、住吉高校、高津高校、法政大学第二高校、新城高校、生田東高校、菅高校、カリタス学園、洗足学園、川崎総合科学高校 計10校
<参加者>73名
<講師>河田園子(演劇企画 JOKO)
<アシスタント>中野亮輔(劇団青年座)
【はじめに】
川崎市高等学校演劇研究会に加盟する高校10校から演劇部員が集まり合同でワークショップを実施しました。
昨年のワークショップでは最後に質疑応答を行いましたが、学校ごとに多くの課題や悩みを抱えていることがわかり、今年はそれらを合同ワークショップの中で解決できるよう事前アンケートを行ったところ、次のような悩みが多く見られました。
・台詞を読むときに、抑揚、トーン、強調、感情の出し方をどうすればいいのかわからない
・舞台上で自然な動きができない、どうやって動けばいいのかわからない
・演じる役をどうやって深めればいいのかわからない
これらの悩みから「自分がどうやって演じるか」に捉われていることがわかり、この役は「何のためにこのセリフを話すのか」「何のためにこの場にいるのか」といった『役の目的』をつかむことで解消できると考え、『目的』に焦点を当てた基礎と作品づくりのワークショップを行いました。
ワークショップ当日、10校の参加校から1~3年生73名が集まりました。ワークショップを行うにあたり、初対面や学年による遠慮が生まれると考え、今回は全員がフラットな立場で取り組めるよう「敬語禁止」のルールを設けます。
講師の河田さんからは「今日ここにいるみんなは広い地球の中から集まった仲間です。先輩後輩、初対面だからと遠慮している暇はない。私たち講師も同じ仲間なので遠慮せずに、一緒にワークショップを楽しみましょう」と声かけがありました。
【アイスブレイク】
心と体の緊張をほぐすため、まずはアイスブレイクを行います。簡単なシアターゲームを重ねながらコミュニケーションを図っていき、心の壁を取り払います。
ゲームの一つとして、「一人にならないゲーム」では、「好きなアニメ」「好きな学校行事」といったお題に対して自分で答えを決め、ひそひそ声だけで周りとコミュニケーションをとり同じ答えの仲間を見つけていきます。共通の好みを持つグループができあがることで自然と仲間意識が生まれていきました。
【「行こうよ」ゲーム】
グループ分けをして2組ずつ向かい合って並びます。
一方のグループが「行こうよ」のセリフだけを投げかけて、相手グループを呼び込めるかというチャレンジです。そこで今回のテーマである『目的』を持つことでセリフの話し方、聞こえ方がどう変わるのかを体験します。
セリフを言うチームだけにお題の目的を伝えますが、<目の前に推しのアイドルがいるから一緒に行こう>の「行こうよ」だと、話すセリフは同じでも伝え方が明るくなり、聞き手も行ってみたいという気持ちになります。
反対に<津波がすぐそこまで迫っているから逃げて!>の「行こうよ」だと鬼気迫る言葉になり、恐怖心を煽られます。
今回の事前アンケートでは、抑揚の付け方や感情の込め方といった「セリフの言い方」の悩みが多くありました。そこで「行こうよ」のゲームを通して、セリフに目的さえあれば結果として自然な抑揚や感情が乗り、相手に伝わる言葉になることを体験しました。
【ディバイジングシアター】
最後にグループで一から作品を創って演じます。ディバイジングとは、テキストはなく、演者が意見を出し合って自由に創作する手法です。ほとんど初対面のメンバーとの創作ですが、敬語禁止の中でワークショップを続けたことで、萎縮せず生き生きと意見が飛び交います。
作品のテーマは「実際にはないけどあったらいい学校行事」。いきなりストーリーを考えるのではなく、段階的に創作していきます。
① グループ内で決めたオリジナルの行事をストップモーションで表現する。
② ①が2コマ目になるような4コマ漫画をストップモーションで表現する。
③ ②が一連のストーリーになるようにセリフを考える。
小さなステップを設けながら①でテーマを具現化、②で展開を構成して③で繋ぎ合わせる。この時点で大まかな作品が完成しますが、ここで一つ課題を与えます。
④ 一人一人にランダムな『目的』を与え、誰にも言わずに自分の目的を達成できるようストーリーを再構築する。
『目的』は「全員を解散させたい」「全員を従わせたい」や、それに反して「全員をここに留まらせたい」「リーダーをつくらせない」などがあります。目的のために各々が行動して、対立や障害が生じることで新しいドラマが創られていきます。
最後は3分以内のストーリーにまとめて一組ずつ上演しました。
上演作品:「演劇大会」「流しそうめん大会」「じゃんけん大会」「お化け屋敷」「夏祭り」「ファッションショー」
【さいごに】
講師の河田さんとアシスタントの中野さんから参加者へメッセージを投げかけます。
河田「目的を持って動いたことで、一人一人が舞台上で生きていた。セリフがないときでも自然と目的に沿って動けている。これから先、役を演じるときに、その役が何のためにいるのかを考えてみよう。きっと障害や対立もあるが、それらを解消して達成に向かうことがドラマチックとなる。」
中野「これから先、台本を読みながら、この役の目的は何だろう、何を達成したいのだろう、なぜ達成できていないのだろうと考えると今よりももっと深く掘り下げることができる。今日は『目的』の大切さが伝われば嬉しい。そして今日出会った素敵な仲間を大切にしてこれからも頑張ってください。」
今回は事前アンケートで抱えていた多くの悩みを解決するキーワードとして『目的』をテーマとしたワークショップを行いました。事前アンケートを実施したことで参加者たちも日々の課題と向き合う機会となり、より自分たちに必要なこととして前のめりに吸収しようとする姿勢が見えました。
昨年に引き続き、この合同アウトリーチの後、さらに希望する学校には、それぞれの学校が持つ悩みをクリアすることを目的とした「アフターアウトリーチ」を今年度中に実施していく予定です。
【参加者アンケート抜粋】
・最初は緊張したけどみんなと仲良くなれるような企画で楽しかった。
・コミュニケーションをとりながら進行したことで、最後の劇づくりも和やかに楽しむことができた。
・『目的』を持つことの大切さを体感できました。
・事前アンケートで悩んでいたことを細かく体験できてすごく身につき、楽しかったです!
・今回学んだことを普段の練習にも活かしていきたい。