放課後シアターvol.5 『イロイロ ぬくもりの記憶』・・・3/29(日)

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放課後シアターvol.5 『イロイロ ぬくもりの記憶』開催!

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今回は、高校生が事前に鑑賞し、その時に感想を話し合いました。最初の第一印象を語ったあとにLINEで座談会を開き、それぞれの原稿とともに、ZINEにまとめました。

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ZINEの最終確認は本番当日、さっと校正して、上映会に臨みました。

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3月29日の上映後には参加者の方にはZINEを配布。トークは高校生の司会で3Fのコラボレーションスペースで行いました。

本日の放課後シアターは東京フィルメックス プログラムディレクターの市山尚三さんをゲストにおまねきしました。

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司会:ゲストは東京フィルメックスのプログラム・ディレクターの市山尚三さんです。よろしくおねがいいたします。まずこちらの作品、カンヌ国際映画祭でも受賞していますが、何が決め手だったと思われますか?

市山:カンヌ国際映画祭はコンペティションというメインの部門以外にいろいろな部門があります。この作品は全部門の新人監督の作品の中から選ばれていますが、監督週間というなかの部門です。私は審査員ではないので選定理由は分かりませんが、一つあるとすれば、シンガポールのある特殊な社会状況だか、そこで生きている家族の視点から撮影をしていますけれど、誰にも分かりやすい話で、自分たちの社会でも起こるかも、というバランスがいい、ということでしょうか。

撮影のスタイルもはっきりしています。TVドラマに比べて何か違うということが分かる。これは何回か見ると気づきます。最初、母の会社の場面。人物を突然映すわけでなくモノを「なめて」(と映画の世界ではいいますが)つまり、映してから、人にカメラを当てています。つまり何も考えずに撮っているわけでなく意識して撮影しています。カンヌで選ばれたという時点で、美学的スタイルがあるということでしょう。私も映画祭の審査員を何回かやりましたが、最終的には自分がノッてみられるか。つまり感動した、推したいと思わせる作品が選ばれると思います。審査は「撮影は何点」というようなポイント制ではないので。

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司会:まだ映画をたくさん見たわけでないので、映画の素人ですが、映画を観るポイントはどこですか?

市山:もちろん普通に見ていいんです。でも『イロイロ』のような作品は何かひっかかるところがあるはず。この映画はセリフや映像の他に見せるところがある。何か分からない場面、気になるところ、映画のおもしろいところが一回見ただけでは分からない。気になったところを自分で考えるのがおもしろいと思います。映画をつくる人以上に見た人が考えているという面白さがありますね。

最初は普通にストーリーを追ってというのでいいと思います。もう一回見る機会があったら、細かいところまで考えながらみてほしいですね。

この作品は字幕をやっているうちにカンヌのときには分からなかったことに自分でも気づきました。作る人は何か意図を持って作っている。撮り方にも何かの意味がある。疑問に思うところは注意する、ということでしょうか?

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司会:実は、字幕について興味があります。映画を観ていると音声よりも省いている部分があると聞きました。どんなルールがありますか?

市山:まず文字数に制限があります。だいたい音声より短くしないと。吹き替えは2倍くらい情報量があります。言っていることの1/2にする。私は直訳にこだわりますが、意訳せざる得ないこともあります。そこはセンスが問われるところです。訳が間違っていても、そうせざるを得ない場合もある。『イロイロ』の場合、訳しきれていないところが残念ながらあります。

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観客1:チャン監督の映画を初めてみました。是枝監督に影響されたというのを聞き、日本の監督が世界に評価されるのはうれしいと思いました。世界で注目されている日本監督はいますか?

市山:新しい監督というと、河瀬直美さん以降の世代はあまり知られていません。山下敦弘監督やモスクワで賞を取った熊切和嘉さんでしょうか。フランスでは『サウダージ』をつくった富田克也監督が期待されています。日本国内でメジャーな監督というのは少ないですね。

海外で評価される人は国内では評価されづらい人であることがよくあります。韓国や中国も同じです。どちらがいいということでもありません。両方で評価されれば一番いいのですが。

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観客2:映画祭で観客のカラーというのはわかりますか?

市山:映画祭はそれぞれのカラーがあります。ただそれは選ぶ人によります。サッカーの代表監督のようなものです。例えばカンヌ国際映画祭のコンペは15年くらい変わっていない。ある種のカラーが出来ています。ヴェネチア国際映画祭は変わりました。ただ北野武監督は変わっても選ばれていますけど。それに加えて審査員は毎回変わるので選ばれる映画も変わります。

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観客3:『イロイロ』は監督の長編デビュー作、監督の子どもの経験がベースにかかれているのでしょうか?

市山:チェン監督は自分の周囲に起きたこと以外でも作品を撮ることができると思います。ただデビューに当たっては自分が子どもの時のことを撮りたいというのはあったかもしれませんね。監督自身の家はここまではひどくなかったと言っていましたけど(笑)。その辺は創作ですが、父親の失業は本当のことだそうです。デビューでこれだけのものが出来るとこの後が大変(笑)。ただし、制作は3年以上かかっています。フィルメックスに企画を出した時はだいぶ違う話だったと思います。

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観客4:高校生に質問です。TVでもやらない単館上映を観るきっかけはなんですか?

司会:ええと

市山:観なきゃいけないから?

司会:もともと「来ませんか」と声をかけてもらいました。

市山:ぱっと見ておもしろいとおもった点は?

司会:前回は『NO』をみましたが、正直、苦手な映画でした。今回はドラマ的で感情移入がしやすかったです。

参加者1:「放課後シアター」に興味があって。シンガポール映画ってどんな雰囲気か気になったので。

市山さんに、質問があります。外国映画を日本に持ってくるときには、賞を取っていないと難しいのでしょうか?

市山:映画祭は上映するだけなので簡単です。劇場上映の配給ですが、お金がかかりますから大変です。ときに賞が役に立ちますが、必ずしも役立つとは限りません。この映画を上映したいという配給会社の意欲も大切です。

参加者1:こういう映画をもっと見る機会があるといいとおもうのですが。

市山:いまはDVDが売れなくなっているなか、アート映画を配給するのが難しくなっています。観客に理解されやすいかは大事なポイントですね。

司会:ジャールーは一般の2,000人の子の中から選んだそうですが、そのこだわりの効果はどうでしょう?

市山:それは監督でないと分からないけれども、他の俳優はベテランで固めています。子役の面接はしたことがありますが、むずかしいですね。最後は監督が決めたと思います。

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観客1:現在、映画で国際的に評価の高い国はありますか?

市山:90年代はイラン映画でした。2000年以降は東南アジアが新しい地域として出てきました。デジタル普及で簡単に撮影できるようになりました。90年代前半はすくなかったので、フィリピン映画が今は出ていています。カンヌのコンペティションの20作品のうち3作品くらいにアジア作品がはいるかなというところです。アジア以外だとラテンアメリカが注目されている地域ですね。

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観客5:好奇心で高校生に聞きますが、単館系の映画館が気になるきっかけは?

山田:洋画好きの友人の影響です。

観客5:(ZINEに)座談会のページがあるがこういう風に友人同士で話すことはあるの?これをLINEでやったなんてすごい。

市山:ハイレベルだよね。これ。

高校生3:『レ・ミゼラブル』を観たあと、そのあと友だちに勧めたらハマったことがありました。情報交換はしますね。

司会:時間ですので、これにて放課後シアターを終了したいと思います。みなさんありがとうございました。

※トーク終了後、市山さんは参加した高校生、大学生たちとしばし談笑してくださいました。

市山さん、参加してくださったみなさんありがとうございました。スタッフのみなさんお疲れさまでした。

※ZINEに関しては、後日掲載を予定しております。

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