放課後シアター vol.4 開催!
先ずは高校生スタッフからの「放課後シアター開催」の挨拶。
上映後に監督が来場されて、鑑賞後のみなさんとお話する会がある観客のみなさんにお伝えします。
鑑賞後には3Fのコラボレーションスペースに移動。
プラキシノスコープやフェナキノスコープフリップブックなどを展示しました。
さて、山村さんをお迎えして放課後シアターがスタートしました!
まず、スタッフ2人が自己紹介をして、山村さんをご紹介します。
山村さんの作品はもとより、その他の作品も分かる範囲で解説くださるとのこと。楽しみなスタートです。
みなさんの声をいくつか紹介しましょう。
「『頭山』は落語が立体的に多角的な視点から語られること、「頭」がうごくときに視点が上下しているのも新しい体験だった」
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「『マイブリッジの糸』は糸がほどけていく感じで引き込まれる」
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「『カノン』の調和とズレがおもしろい」
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「『心象風景』はすごく原始的でシンプル。光の表現が巧み、ただし空気は重い」
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「『ビーズゲーム』で表現されている進化の果てにあるものはどの時代でもかわらないのかもしれない」
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「『ワイルドライフ』の最初のはじまりもいいけど、ラストがしびれる」
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「『こどもの形而上学』が絵本のような展開がおもしろい」
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「『Fig』の昭和の東京という感じ。なんだかなつかしく感じた」
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「『カノン』の音楽と映像が幾何学的に構成されているのが印象的でした」
それらのコメントに山村さんがメモをとりながら丁寧に応じつつ、作品について話してくれました。
「『マイブリッジの糸』は企画が6年くらい、制作が2年くらいかかりました。きっかけはワイルドライフの女性監督2人がNFBで作品(『ある一日のはじまり』1999年)をつくっていて紹介してくれたのです。彼女たちの『ワイルドライフ』は、『マイブリッジの糸』と同じ時期の作品です。これはアマンダさんの祖父の実話ということでドキュメンタリータッチなのですが、実は『マイブリッジの糸』も映画誕生直前の出来事で、ある種のドキュメンタリーのようになっています。
以前、シカゴでマイブリッジの博物館を訪れた際に、彼の連続写真の実績は知っていました。これがのちにエジソンが発明する映画に繋がってゆくのですね。マイブリッジはイギリス出身なのですが、私生活で殺人を犯していたということをここで初めて知りました。今回はエドワード・マイブリッジという親しみのある人間、写真家として表現しようとおもいました。
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さきほど『フィグ』の表現がおもしろかったとご意見いただきましたが、とても小さい紙にかきました。それを拡大することで画材の質感が見えてくるんですね。それが面白いとおもいます。紙の汚れやにじみ、ペンタッチみあえて活かし、その質感を感じる。そうするとねらいとはちがう意図しないものもでてきます。それがねらいです。コントロールしきると冷たく、頭で考えた以上のものにならないと感じます。原始的なアニメーションはコントロールしきらないところに魅了がありますから。
また、レイヤーは背景にあたるものですが、マイブリッジでは多くても3枚です。(『頭山』はもっと複雑にしているとのこと)
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今回上映した作品ではありませんが、『カノン』のマクラーレンは高校時代に『隣人』という作品をみたのが知るきっかけで知りました。高校の先生がみせてくれましたが、このような作品をみるチャンスはあまりないとおもいます。このころから8ミリで映像をつくっていました。(会場で驚きの声が!)
最初にアニメーションをつくったのは中学で2本です。高校では学園祭のときに実写をつくったりアニメーションをつくったり、並行していましたね。実写は人との関係性や準備が必要なところがアニメーションとちがうところでしょうか。
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『ビーズゲーム』のイシュ・パテルは制作方法が作品毎にかわり、テーマ、モチーフも様々ですが、一貫した美学に貫かれています。」
みなさん熱心に耳をかたむけていましたが、ここで質問タイムとなりました。
山村さんの丁寧な受け答えに、次第に参加者もリラックスしてきて、いろいろな質問が出てきました。
Q)アニメーションの魅力はなんですか?
A)アニメーションの魅力といえば、映像の原理を含めてわかりやすく見せる。いろんな可能性があることです。
Q)次の作品の予定、構想があれば教えてください。
A)「文学界」で連載している絵はアニメーションのスケッチという形でかいているものがあります、これから作品に展開することがあるとおもいます。
(※注)それとは別に新作は今年にも発表にされるとのこと。
A)国内外を問わずベストスリーのアニメーションはなんですか?
『霧の中のハリネズミ』(ユーリ・ノルシュテイン)と『草上の朝食』(プリット・パルン)はいつも1,2位で、大学で学生にも見せています。3位は、、、この一本といわれると難しいですね。イシュ・パテルさんもそうですが、いっぱいありすぎて。
長編では『イエロー・サブマリン』(ジョージ・ダニング)と『盗まれた飛行船』(カレル・ゼマン)でしょうか?3位はやはりむずかしいですね。
※注)Experimental Film Societyの12人の好きな映画監督で山村浩二監督は、フェリーニ、ホーシャオシェン、ジャック・タチ、カレル・ゼマン、ブニュエル、プリット・パルン、ファズビンダー、鈴木清順、小津安二郎、ユーリ・ノルシュテイン、ヴィターリー・カネフスキーの名前を挙げています。
Q)絵はだれの影響をうけましたか?
A)中世のころのヨーロッパの版画が好きでした。無個性なものですけれどもね。
Q)アニメーションをつくるうえでの哲学をおしえてください?
A)言葉にできないものを映像にしているので答えるのが難しいですが。「世界がどうして実存しているのか?」ということに興味があるので、実際の小説家や哲学者にも影響を受けています。例えば、ホルヘ・ルイス・ボルヘス(※注:「バベルの図書館」など)やルーマニアの宗教学者で幻想文学も書く、ミルチャ・エリアーデです。
Q)問題をのりこえていく方法はなんですか?
A)創作のなかで難しいというときはチャンスだと思っています。課題があるっていうことは何かを得るチャンスです。どうしたら、どう表現したらよいのか?ワンカットをどうするか、パズルを埋めるように。その点では『マイブリッジの糸』は抽象的なので大変でした。
Q)実写とアニメーションの境界はなんですか?
A)実写は実際の動きをもとにして時間をコントロールします。つまり時間や空間は既にありますから。それに比べてアニメーションはフレームバイフレームといいますが、時間や空間をつくっていくものでしょうか。いまはCGが発達してどちらがどちらかわからないというようになりつつあります。これはアメリカの学会でも議論になっています。
Q)愛用の画材はなんですか?
A)普通のものです。
ステッドラーの水彩色えんぴつやドクターマーチンのカラーインクなどです。
Q)いま興味のある画材はなんですか?
A)日本の和紙と墨絵と朱です。和紙は早く決着をつけないといけないというところにおもしろさがあるとおもいます。以前はヨーロッパのアルシュ紙が好きでした。ただ今は原点回帰でしょうか。
さて、45分の予定でしたが、時間いっぱいになったのでここでおしまい!
最後に山村さんに大きな拍手をしておしまいとなりました。
最後にスタッフは山村監督のカードをみながら歓談しました。
今回の放課後シアターのゲストにいらしていただいた山村浩二監督そしてご参加いただいた皆様に感謝申し上げます。