《速報》放課後シアターvol.8 『THE COCKPIT』レポート

2月20日(月)の放課後シアター vol.8 『THE COCKPIT』の様子を参加してくださった、日本映画大学の中山周治先生がまとめてくださりました!
ご紹介いたします。

放課後シアター 『The Cockpit』 アフタートーク
2016年2月20日(土) 川崎市アートセンター・コラボレーションスペースにて



―それでは放課後シアターを始めます。司会のオクヤマです。はじめに映画の感想を中高生にきいてみましょう。
Aさん■一からモノを作るところが見られてうれしかった。
Bさん■スーパーボールを靴箱の上で転がすような何の生産性もない遊びから音楽が生まれるところが面白かった。
Cさん■モノを作るってすごいなあと思った。
Dさん■創作とか芸術って、歴史とか文化史とか学ばなきゃいけないこと多いじゃないですか、でもこっちがホンモノ。こっちが芸術の始まったところだ、と思った。

三宅監督■そう、細かいことを学ぶ前にまずは自分の手を動かしてみる、とりあえず体を動かしてみる。それが楽しいからやり続けるだけなんだよな、というシンプルなことを、ぼくもこの映画をつくりながら改めて気づきました。

―この作品を作るきっかけは何だったんですか?
三宅■まず「からだ」をテーマに作品を作ってほしいと愛知芸術文化センターさんから依頼がありました。自分の好きなミュージシャンの仕事をじっくり見てみたいと思い、ファンとして客席で見ていたOMSBくんのことを考えました。

―そうだったんですか。
三宅■同じレーベルに所属しているBimくんにも声を掛けて、ふたりが1曲作りあげていく姿を撮影したいとお願いしました。ふたりは今回はじめて一緒に曲をつくってくれたので、ファン目線でいえば夢のコラボです。いつもの様子をただ撮影させてほしいと提案をするよりも、せっかくだから新しいこと、つまり「はじめて一緒に曲をつくってほしい」とお願いすることで、ふたりがノッてくれるかなと考えました。

OMSB■ 最初に映画のオファーと聞いた時は、いよいよ映画デビューか、「OMSB・THE・MOVIE」か、どうしようかな、と思いました。詳しい話を聞くまでは出演するかどうか、かなり迷っていましたが、実際に会ってみると、自分と似ているものを感じました。まず、顔のフォルムが似てる。今日もクローンみたいな格好で。

三宅■こないだ会ったときも服が似てたけど、今日も青いジーンズが同じだったり、ちょっと照れますね。
(この日も2人とも濃紺のキャップ。上着も色違いだけど趣味が似ている)


―撮影にはどれくらいかかったんですか?
三宅■2日間です。2日あれば1曲作れると最初に聞いたときは驚きました。

OMSB■実際は結構大変でしたけど、遅かろうが早かろうが、自分のなかに衝動があるかないかで曲は変わります。歌詞は早ければ1バース(サビの前後のラップ部分)15分。遅いと1日で1フレーズとか、30日かかってやっと1バースというときもあります。

―(会場から)私は初めてこうゆう音楽ジャンルを知りました。

三宅■ヒップホップ、ラップといいますが、OMSBはいま一番の才能なので、ぜひ彼のアルバムも聴いてみてください。

―カットしたシーンはどの位あったんですか?
三宅■20時間強カメラを回して、64分にしています。20時間全部見ても面白いけれど、それだとお客さんがさすがに大変ですよね。1時間ちょっとの映画なら、誰でも気軽に見られるかなと思いました。内容面でも上映面でも、身近な映画にしたかったんです。

OMSB■補足すると、コンビニのような気軽さみたいなことだと・・・補足というか蛇足でした。

―最後のシーン以外、全部部屋の中でしたね。
三宅■編集のときに、部屋の中だけの映画にしようと考えました。合間にカレーを食べに外へ行くところなども撮りましたが、使っていません。全部部屋の中の映画なんてなかなかないから、へんてこだけどユニークなチャレンジかなと。

OMSB■ホントは夜が面白かったんですよ。怖い話とか、女の話とか。

三宅■修学旅行みたいだよね。その様子は撮ってないので映画には無いですが、でも映画をみてくれた人ならかんたんに想像できると思う。昼間にカメラが回っているからといってなにか特別に格好つけたりしているわけではないよね。

―演技指導とかは?
三宅■全くないです。なるべくいつも通りやってもらいたいと思っていました。でも実は、自然体でいることってかなり難しい。カメラが目の前にある時点で自然ではなくなるし、「リラックスして」と言うと、逆に人はリラックスできなくなる。うまくいかなかったらどうしようかなと撮る前はすこし悩んだんですが、同じ部屋に集合してとりあえず一緒にそれぞれの準備をしはじめたら、すぐに全員が自分のやることに集中して、すぐに楽しんでくれた気がします。なので、演技指導というより、ただ一緒に楽しんだだけだと思っています。

―最後の風景シーンは初めから予定していたんですか?
三宅■いえ、たまたま撮ってあったものを合わせてみたらバッチリだったから使いました。あれは水戸に向かう常磐道の高速バスの車窓からアイフォンで撮った動画です。

―(会場から質問)部屋で曲を作るシーンがずっとあって、最後に外に飛び出して終わるシーンの間にOMSBさんが呆然としているシーンが入るじゃないですか。自分は最後あそこで、曲が完成してハイタッチとかしているところを想像してたんだけど。
三宅■そこを見てくれたのが嬉しいです。あの顔が、楽しいでも悲しいでも怒っているでもなくて、「ただの顔」なのがめちゃめちゃイイと思って入れたんです。あの顔、みんなが映画見ているときの顔と同じだと思うんですよね。映画見ているときにカッコつけてる人いないでしょ? 映画を見ている人と映画のなかのOMSBが同じ顔になっている瞬間です。そこで「ハッ」としてほしい、と賭けたところです。

―OMSBさんはこの映画に出ている自分を見てどう思いましたか。
OMSB■最初は、ほんとになにも考えてないな、アホな顔してるなと思いました。でも、自分でみていても、クセになる映画です。いままで何回も見ているんですが、毎回ちがうところに目がいったり、いろいろわかるようになります。

―監督は次どんな映画を撮りたいですか?
三宅■OMSBが探偵とか、火星に一人取り残されているとか、撮ってみたいですね。(会場、笑)タイミングが合えば、ミュージックビデオやライブの映像など、ぜひまた一緒にやってみたいです。

―最後にボクらに一言お願いします。
三宅■世の中、やりきれないこととかしんどいことも多いですが、そこで悩まずに、楽しくやってほしい。オレはオレでやれることを楽しくやるし、みんなも勝手に楽しくやってほしいです。(OMSBさんの書いたメモを見て)OMSBが今ここに「ボケて」ってカンペを出してきました(笑)。

―OMSBさんからもお願いします。
OMSB■楽しくやっていきましょう。気を張り詰めるよりも、気を抜いていきましょう。

―今日はどうもありがとうございました。映画監督の三宅唱さんとラッパーのOMSBさんでした。
三宅■そして司会のオクヤマ君でした。

(拍手)

近日中に当日の詳細もご紹介いたします!

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