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指輪ホテル『EXCHANGE_autotype』出演者インタビュー

日本のみならず、海外からも高い評価を受けている指輪ホテルが、昨年10月に発表した新作『EXCHANGE』。
「エクスチェンジ(交換)」をテーマに、
言葉、記憶、コンタクト、ムーブメント等が交錯するステージは、「イメージの洪水」となって観る者をリアルで不思議な世界へと誘った。

そして、そのスピンオフ作品[※1]として上演されるのが『EXCHANGE_autotype』。
前回公演にも出演した2人のパフォーマー、川口隆夫と尹明希(ユン・ミュンフィ)が、それぞれソロによる新作を初演する。
どちらも川崎市アートセンター・アルテリオ小劇場ならではの特別限定バージョン。
はたして、どのような作品になるのだろうか!?

>>公演詳細

川口隆夫「グッド・ラック」

取材・文/堤広志

指輪ホテル・羊屋白玉との出会い

そもそも指輪ホテルや羊屋白玉さんと出会われたのは?

川口 ダムタイプ[※2]で照明をやっている藤本隆行が、2007年の3月にLED照明[※3]を使ったワークショップをやったんです。PCに照明のソフトを入れて、持ってきた音楽をかけて、ダンサーが自分で音楽と照明をコントロールするという。パフォーマーとか演出家とかいろんな人がやってきていて、そこに僕も羊屋さんも参加していた。

それまで指輪ホテルや羊屋さんの活動はご存じでしたか?

川口 知りませんでした。ただ、そのショーイングを見て非常に面白いという印象があった。指輪ホテルのアプローチは普通の演劇とも違ってパフォーマンス系、でもその中にしっかりテキストが入ってくる。言葉を使ったパフォーマンスがこのところ僕のテーマの一つにもなっているので、羊屋さんから「演ってみませんか?」と言われて『EXCHANGE』に参加しました。


『夜色』(2001初演)(c)小原大貴

実際にコラボレートされて、いかがでしたか?

川口 すごく面白かったですよ。もともと彼女の持っていたアイデアとかテキストをパフォーマーに与え、それを僕らが料理して、出した動きのモチーフを、また素材として構成していく。キーワードを探して物語を作っていく。とても羊屋さんらしいやり方だし、彼女も新しいことを試したプロダクションだろうと。

戯曲があってセリフや場面構成があらかじめ決まっている一般の演劇とは違いますね。ダムタイプのやり方とも異なりますか?

川口 ダムタイプはもっとビジュアルというか、舞台装置や舞台空間のコンセプトみたいなところへいきますね。ストーリーではなく、セノグラフィー(舞台美術)が持つ可能性を追求していく。羊屋さんの場合は、やっぱりテキスト。彼女も言っていたけど、最終的には物語に引き戻していく。

「EXCHANGE」というのは、羊屋さんの持ち出してきたテーマですか?

川口 そうです。「交換する」ということ。ただ、「交換とは?」「文明論とは?」っていうような大文字的な議論はなかったです(笑)。もう少し具体的というか、動きを引き出すための音を考えたり。例えば、あなたはこういうリズムを足でやってください、あなたは手でやってください、あなたは音を出してください、というお題を出して、それを組み合わせて一つの動きにする。動きのモチーフを貯金していって、それを使って構成したり。あとは、彼女が書いてきたテキストをインスピレーションにして、即興で出てきたものを拾っていったり、こういったテーマについてテキストを書いてくださいというお題があって、それを使っていくという感じでしたね。

彼女の持ち出してくるテーマやモチーフは、本能的に世界の真理を突いてくるような不思議な感触がありますね?

川口 あの世とこの世のコミュニケーションというのが一つのテーマになっていて。物語の中にもそういう筋立てがある。そういう世界観がポエジーのある言葉として出てくるのがいいですよね。それを声に出して言ったり歌ったり、レコーディングしたナレーションがボイスオーバーで入る。僕はすごく好きですね。

体から染み出ていくようなダンスを

今回の「グッド・ラック」は、『EXCHANGE』の時に出たアイデアやモチーフからきたものですか? それともまったく新しく立ち上げるのでしょうか?


『ディケノヴェス』(2003初演)(c)小原大貴

川口 イメージは少なからずきています。『EXCHANGE』の中の僕のソロシーンが「グッド・ラック」という名前なんです。「海沿いの国道を歩く」というテキストがボイスオーバーで流れるんですけど、その「歩く」ことが大きなテーマになっています。それともう一つには、写真家の杉本博司[※4]さんに幾何学的なオブジェを写した写真シリーズがありますよね。ああいうのがダンスでできたらいいなぁとも思っていて。

それでポストモダン・ダンスのようにミニマムな動作を繰り返したり、舞踏のようにゆっくり動いたりするシーンがあるんですね?

川口 体から染み出ていくような動き、そういうダンスの追求をしたいと思ったのはありますね。

優美でスタティック(静的)な動きが、一瞬一瞬世界と繋がっているようにも思えました。その感覚はどこからきているのでしょう?

川口 僕はきちっと踊れるダンサーとは違って、ダンス的には隙がある身体だとよく言われるんです。そこを逆手に取って(笑)、トレーニングに裏打ちされたダンサーとは違った時間とか空間があるかもしれないと。20年ぐらい前に、仕種(しぐさ)とか動作が意味を成す前に、単位として成立する前に止めてしまうというようなパフォーマンスをやっていた時があって。セリフも言い切る前にブツッて切っちゃうとか、声も拡散させるみたいに出すとか。そういう身体感覚からきていると思います。そういうものをどう提示すれば舞台で成立するのか、面白いのかというのが今回の課題、挑戦したいところですね。

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川口隆夫  パフォーマー/ダンサー http://www.kawaguchitakao.com/

大学時代よりパントマイムを基礎としたムーブメントシアターのテクニック、<ミーム>を学ぶ。その期間、テキストベースの芝居からパフォーマンスアートやダンスなど、幅広く数多くのプロジェクトに参加する。その後、スペイン留学を経て、1990年よりダンスカンパニーATA DANCEを吉福敦子と共同で主宰し、多くのダンス作品を発表する。1996年からはパフォーマンスグループ「ダムタイプ」に参加し、『OR』、『メモランダム』、『ヴォヤージュ』に出演、現在でもツアーが続いている。並行して2000年以降、独自にソロ活動を展開。特に2003年以降は音楽とアートの領域をまたぐアーティスト/パフォーマーとのコラボレーションを行い、ダンスでも演劇でもない、まさに「パフォーマンスとしか言いようのない(朝日新聞評2005年3月12日、評論家・石井達朗氏)」作品を発表している。主な作品に『ディケノヴェス』(2003)、『D.D.D.』(2004)、『TABLEMIND』(2006)などがある。

ソロ活動での主な作品には次のようなものがある。

パフォーマンス『D.D.D. ——私の心臓はあと何回鼓動して止まるのか』
2004.03 東京・スーパーデラックス(芸術文化振興基金助成事業)
2005.09 クロアチア共和国 クィーアザグレブ・フェスティバル(ザグレブ、リエカ二都市公演)
2006.03 東京・JADEフェスティバル
2006.06 イタリア・ヴェネチア・ビエンナーレ
2007.06 韓国・ソウル Modafe モダンダンスフェスティバル
2007.07 東京・スーパーデラックス
2007.07 シンガポール・Esplanade

*ビジュアルアーティストで倍音歌手の山川冬樹とのコラボレーション。心音を増幅し、その電気信号を使って電球を明滅させ、さらに倍音歌唱(ホーメイ)の呼吸によりそのペースをもコントロールする山川。それと格闘するかのように、リングに見立てられた小さなテーブルの上で自らの肉体と戦う覆面レスラーの川口。心臓、呼吸、筋肉など生命の基本を成す身体機能の限界を視覚化する作品。

パフォーマンス『ディケノヴェス』
2003.09 東京・ラフォーレミュージアム原宿
2005.03 東京・パナソニックセンター有明スタジオ(東京都歴史文化財団助成事業)
*アーティスト伊東篤宏の発明した蛍光灯を使ったノイズと光のオブジェ+進揚一郎のドラムスのユニット「オプトラム」とのコラボレーション。バランス感覚とめまい、視覚の錯乱をテーマに、しゃべり、ひたすら回転し続けるムーブメント、ビデオなどを用いた、ミクストメディアのパフォーマンス作品。

ソロダンス『夜色』
2001.03 オランダ・フローニンゲン、グランドシアター・プロデュース、オランダ3都市ツアー
2003.02 ポストメインストリーム・パフォーミングアーツ・フェスティバル参加、東京・THINK ZONE)
2003.11 アジア舞台芸術祭インド・デリー公演参加
2004.10 東京・スパイラルホール(メゾン・モエ・パーティのオープニング企画)

その他
2000.03 ダンスカンパニー作品『世界の中心』(東京・パークタワーホール・ネクストダンスフェスティバル参加、芸術文化振興基金助成事業)
2007.09山口情報芸術センター レジデンスプロジェクト『true』ワールドプレミア(2007.12金沢・横浜)
2007.10 パフォーミングアーツカンパニー・指輪ホテル 新作『エクスチェンジ』ワールドプレミア・日本ツアー(東京・京都・札幌)

※1 スピンオフ
=spin-offまたはspinoff。派生作品や副産物の意味。本編とは異なる「外伝」や「サブストーリー」などを指す。テレビドラマ『踊る大捜査線』シリーズにおける、映画『交渉人 真下正義』や『容疑者 室井慎次』など。

※2 ダムタイプ
Dumb Typeまたはdumb type。1984年、京都市立芸術大学の学生を中心に結成されたマルチメディア・アート・パフォーマンス・グループ。建築、美術、デザイン、音楽、映像、ダンスなど専門分野の異なるメンバーたちが、作品やプロジェクトごとに自由に参加し、アート表現の可能性に挑戦している。
数ある作品の中でも特に重要なのは『S/N』(94年初演)で、結成時からの中心メンバーであった古橋悌二が、ステージ上で自らHIVポジティブである事実をカムアウトし、エイズや性を巡る問題を投げかけて、衝撃を巻き起こした。古橋は95年に死去するが、その後に発表された『OR』(97年初演)では、「生か死か」の極限状況を象徴的に追体験するようなパフォーマンスへ発展。さらに『memorandum』(99年初演)では、個人の日常の記憶(=メモ)がランダムに情報化され、肉体の存在自体が消滅していくような内容となっていった。そして、最近作『Voyage』(2001年初演)では、負の感情の連鎖に覆われた世界をグローカルな意識へと導くようなシーンを展開している。
世界的にも著名な前衛アーティスト集団として知られ、各地に招かれ頻繁に海外ツアーをしているが、拠点は現在も京都に置いている。また、川口のように、メンバーそれぞれが独自にソロ活動を行っている点もユニークで、ほかに、高解像度な映像とグルーブ感のある編集技術で観客を圧倒する映像作家の高谷史郎や、ミニマルでエレクトロニカなテクノミュージシャンの池田亮司、メッセージ性の強いダンス・パフォーマンスを繰り広げる砂山典子、LED照明を駆使してダンスとコラボレートしている藤本隆行、そして、オルタナティブに問題作を連打する現代アーティスト高嶺格らがいる。

※3 LED照明
LED(発光ダイオード)を使用した照明器具。従来の白熱灯や蛍光灯などの照明器具に比べ、省エネルギーで発熱もほとんどなく、エコロジーな照明として注目されている。近年は舞台用にも開発が進んでおり、RGB(Red・Green・Blueの光の三原色)の発光を調整して色を変化させたり、瞬時に暗転や明転ができるようになってきている。

※4 杉本博司
すぎもと・ひろし:1948年東京生まれ。立教大学経済学部卒業後、70年に渡米。ロサンゼルスのアート・センター・カレッジ・オブ・デザインで写真を学び、ニューヨークに移住。以降、ロサンゼルス現代美術館、メトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館、カルティエ財団など世界の著名美術館での個展のほか、数多くのグループ展、国際展に参加している。主な仕事に、剥製動物を生きているかのように撮影した「ジオラマ」シリーズや、全米各地の映画館に取材した「劇場」シリーズ、画面を空と海とに二分割した「海景」シリーズ、世界的有名建造物に取り組んだ「建築物」シリーズなどがある。89年毎日芸術賞、2001年ハッセルブラッド財団国際写真賞を受賞。現在はニューヨークと東京在住。 なお、インタビュー中のある幾何学的なオブジェのシリーズとは、数理模型と機構モデル群を撮影した「観念の形」シリーズのこと。

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